SEOは本当に「死んだ」のか?相続分野から見える、AI検索時代の現実と小規模サイトの生存戦略
目次
「アクセス70%減」という衝撃的な言説
近年、「SEOは死んだ」「AIO(AI Optimization)の時代が来た」といった言説が目立つようになりました。
実際に、大手メディアの中には検索エンジンからの流入が60〜70%減少したとされる事例も報じられています。
しかし、この現象をそのまま「すべてのサイトにとってSEOは終わった」と受け取るのは、やや短絡的です。
特に相続分野を見てみると、状況はもう少し冷静に分析できます。

AI検索に表示されやすいのは「相続の大枠」
現在のAI検索(生成AIによる検索要約)で、比較的よく表示されるのは次のようなキーワードです。
- 相続とは
- 遺産分割協議とは
- 遺言の書き方
- 相続放棄とは
いずれも、検索ボリュームが大きく、一般論として説明しやすいテーマです。
つまり、AI検索が得意としているのは
👉「教科書的・総論的な説明」
であり、ここはもともと大手サイトやポータルが強かった領域でもあります。
相続の本質は「個別具体の悩み」にある
一方で、実際に相続に直面した人が抱える悩みは、極めて多様です。
- 配偶者が遺産分割に口出ししてくる
- 相続放棄をした空き家の管理責任で損害賠償を請求された
- 兄弟が遺言の無効を主張している
- 共有名義の不動産を誰も管理しない
- 相続人の一人が認知症になっている
こうした個別具体の問題について検索しても、現状ではAI検索結果が表示されない、あるいは極めて薄い回答しか出ないケースが多いのが実情です。
なぜなら、
- 事案ごとに前提条件が違う
- 一律の正解が存在しない
- 法的評価に幅がある
といった理由から、AIが「断定的に答えにくい領域」だからです。
影響を大きく受けているのは「ビッグキーワード依存サイト」
この視点で見ると、次の構図が見えてきます。
- 大手サイト
- ビッグキーワード中心
- 総論・一般論コンテンツが主力
- → AI検索に代替され、流入が激減
- 小規模・専門特化サイト
- もともとビッグキーワードで上位表示していない
- ロングテール・個別事例が中心
- → AI検索の影響は限定的
つまり、「SEOが死んだ」のではなく、「ビッグキーワード依存モデルが限界を迎えた」と捉える方が、実態に近いと言えます。
小規模サイトにとって、AI検索はむしろ追い風
小規模な相続系サイトは、今後さらに次の方向性を強化すべきです。
① 個別具体の問題に正面から向き合う
- 条文の一般論ではなく「このケースではどう考えるか」
- 実務上よくあるトラブルの整理
- 判断が分かれるポイントの明示
② 専門分野を絞り、尖らせる
- 相続放棄に特化
- 遺産分割トラブルに特化
- 不動産相続に特化
- 家族関係が複雑な相続に特化
③ 「検索意図の深さ」で勝負する
AIが拾えないのは、
- 感情の葛藤
- 家族関係の力学
- 実務上の落とし穴
ここにこそ、人が書く専門サイトの価値があります。
相続サイトにおける「AIO」と「SEO」の役割分担-AI検索時代に、個人・小規模サイトが生き残るための設計図
AIOの役割|「相続の地図」をAIに描かせる
AIOが得意な領域
AI検索が得意としているのは、次のような情報です。
- 相続とは何か
- 相続の基本的な流れ
- 遺産分割協議の概要
- 遺言書の種類と違い
- 相続放棄の一般的な手続き
これらは、
- 一般論として整理できる
- 多くの人に共通する
- 法制度の骨格部分
という特徴があります。
👉 AIOの役割は「相続の全体像を示す地図」を描くこと
です。
相続サイトにおけるAIO対応の考え方
AIOを意識したページは、次のような性質を持たせると有効です。
- 見出し構造が明確(定義 → 手続 → 注意点)
- 用語の定義が曖昧でない
- 例外論や判断分岐を盛り込みすぎない
- 「一般的には」「原則として」という表現を明示
これらのページは、
- AI検索に拾われやすい
- 初学者の入口になる
- サイト全体の信頼性を底上げする
という役割を果たします。
SEOの役割|「地図では解決できない悩み」を拾う
SEOが生き続ける領域
一方で、SEOが今後も強く機能するのは、次のような検索です。
- 遺産分割協議 配偶者 口出し
- 相続放棄 損害賠償 請求された
- 遺言 無効 主張 兄弟
- 相続人 行方不明 手続き
- 共有名義 不動産 売れない
これらはすべて、
- 事実関係が複雑
- 家族関係や感情が絡む
- 結論が一つに定まらない
という特徴を持っています。
👉 SEOの役割は「地図の外で迷っている人を救うこと」
です。
相続サイトにおけるSEO対応の考え方
SEOで狙うべきページは、次のように設計します。
- 検索クエリ=そのまま悩みの文章
- 「このケースでは何が問題になるか」を整理
- 判断が分かれるポイントを明示
- 実務上の選択肢を提示(AかBかCか)
重要なのは、
断定しすぎないこと
です。
AIが苦手とする
「グレーゾーンの整理」
「現実的な落としどころ」
こそが、人の書く相続サイトの価値になります。
AIOとSEOの役割分担【整理表】
| 項目 | AIO(AI検索向け) | SEO(人向け検索) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 初学者・一般層 | 当事者・切迫層 |
| 検索意図 | 知識を知りたい | 問題を解決したい |
| キーワード | 相続とは/相続放棄 | 具体的な状況文 |
| 内容 | 総論・制度説明 | 個別事案・実務論 |
| 表現 | 原則・一般論 | 条件付き・選択肢 |
| AI適性 | 高い | 低い(=人の価値) |
なぜ小規模相続サイトはAIOとSEOを分けるべきか
小規模サイトが「AIOにもSEOにも中途半端に対応する」のが、最も危険です。
- 総論は大手とAIに勝てない
- 個別論は薄くなる
- 専門性が伝わらない
という三重苦に陥ります。
だからこそ、
- AIO:最低限の土台として整える
- SEO:主戦場として徹底的に深掘りする
という役割分担が合理的です。
SEOは死んでいない。ただし「誰にとってのSEOか」が変わった
相続分野に限って言えば、
- 大手が独占していた「広く浅い説明」はAIに奪われつつある
- 個別具体・実務特化の情報は、依然として人が探している
という状況です。
小規模サイトに求められるのは、
たくさんの人に薄く届く情報
ではなく
本当に困っている人に深く刺さる情報
です。
SEOは終わったのではありません。
ようやく、本来あるべき姿に戻りつつあるだけなのだと思います。

過去にインターネット受注で100%稼動する縫製工場を経営しており、平成17年度に経済産業省「IT経営百選」で優秀賞を受賞、翌18年には、最優秀賞を受賞するまでになりましたが、その後縫製工場の経営を止め、飲食店のインターネット担当として勤務いたしました。平成28年11月より独立してSEO対策とWEBコンサルタントとして多くのサイトの検索流入やコンバージョンの改善実績があります。









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